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笑顔の素敵な女の子がいた。
よく笑い、その笑顔が笑顔を呼ぶ。そんないい笑顔だった。
インターネットを通じて知り合った彼女は、奇しくも同じ県内の子だった。
会ってみたら、驚いた。特に着飾っていないし、化粧もしていないというのに、可愛かったからだ。
今時めずらしい感じの子だと思った。
彼女のHNから、私はいもちゃんと呼んだ。冗談半分だったが、彼女はいたく気に入っていた。
いもちゃんには姉がいた。思春期に小さなことが原因で、仲が悪くなってしまった。
喧嘩や争いをするのではない。まるで彼女を空気のように扱うのだ。
そんな姉に、彼女も空気を見るように見ていた。
けど、本当は触れ合いたかったのだ。小さな頃はずっと一緒にいるくらい、仲が良かったから。
いもちゃんは私に言った。姉との仲を取り戻したいと。
ほんの小さなキッカケと、ほんの小さな勇気があれば元に戻るよ。と、私は彼女に言った。
私は彼女のために小説を書いた。
仲の良くない姉妹が、その心を通じ合わせていく話。
そして言葉や文、絵、歌に想いを載せることができるというものを。
この小説が書きあがる頃、いもちゃんは私に自分が病気であることを告げた。
その病は徐々に彼女の体の力を奪っていくものだった。
そのことに気付かなかった私は本当に驚いた。驚きのあまり、励ますことができなかった。
励ましたのは、他の女の子。今思えば、二人の関係は姉妹のようだった。
いもちゃんはその女の子から、姉の幻影を見ていたのかもしれない。
小説が書きあがり、私はすぐにいもちゃんへ送った。入院する二日前だ。
彼女は涙ながらにその小説を読んだという。
そしてその小説から、何かを感じとり、その小説を姉に渡した。
それは何年ぶりかの姉との接触だった。それも、ほんの数秒のものだ。
「読んで」とだけ伝え、彼女は姉に小説を渡した。
姉は久しぶりに会話をした驚きから、ただ呆然とその小説を受け取ったそうだ。
それからいもちゃんの入院生活がはじまった。
彼女は色んな人からの励ましから、この病気に立ち向かう決意をした。
それは私が一番望むものだった。二番目に望んだものも叶えられていた。
病室のベッドの脇には、彼女の姉の姿があった。
私を見て、彼女は笑った。それは今までにない彼女の笑顔だった。