現代版『竹蔵武勇伝†外伝 第一幕~竹蔵とイト~』
朝。俺はとんでもない圧迫感で目が覚めた。
フトンの上に視線を移すと、妹の香音(かおん)が俺の上で眠っていた。
ちゃんと着替えているところを見ると、俺を起こしに来てくれたらしい。
竹蔵「おい、香音」
香音「んにゃ?」
眠たそうに目を擦りながら大きく伸びをする香音。まだ俺の上で、だ。
香音「竹兄ぃ。おはよう」
竹蔵「おはようじゃない。起こしに来たんじゃないのかよ?」
香音「そうだった!見て見てー!」
俺の上から飛び降りると、くるくると回って見せる香音。
今日から来ていく学校の制服を見せにきたんだろう。……もう何回も見せられたけどな。
香音「どう? 可愛い?」
竹蔵「まあまあだな」
香音「へへー。褒められた♪」
竹蔵(褒めたか……俺?)
壁の時計に目をやるとまだ起きるには早い時間だった。
香音め。こんなことのために起こしやがったのか。
竹蔵「香音。俺はまだ眠い」
香音「うん。香音も眠い」
竹蔵「よし、寝ろ。どうせ姉貴が起こしにくるんだしな」
香音「わかった~」
もぞもぞと俺のフトンに入ってくる香音。
竹蔵「自分の部屋で寝ろよ」
再び眠気がやってきたせいか、あまり強く言えない。
というか、もうすぐにでも眠れそうだ。
香音「めんどくさい。竹兄ぃと寝る~」
竹蔵「んー、寝ろ……」
香音「うにゅ……」
俺たちは再び眠りについた。
がこぉおおおおおおんっ!!!!
竹蔵「うぉはっ!!」
頭に何かぶつけられた。かと思うと再び腹に圧迫感。さっきの比じゃねぇ!
そこにはフライパンを片手に俺の腹に足を埋める姉、文(ふみ)姉ぇの姿があった。
文「何時だと思ってるの! さっさと支度しちゃいな!」
香音「あ~、文姉ぇだ~」
文「香音……せっかくの制服がしわしわになるよ」
香音「大丈夫ー!」
文「大丈夫じゃない。早くフトンから出なさいな」
香音「はーいー」
香音はフトンから出るとそのまま階段を下りていった。
姉貴の視線が俺に突き刺さる
文「このシスコン」
竹蔵「うるせぇなー。姉貴も昔は俺と寝てただろーが」
文「なっ! む、昔のことじゃないか!」
壁の時計を再び確認する。
……やっぱりまだ起きるような時間じゃない。
竹蔵「ラジオ体操でもさせる気かよ?」
頭をかきながら時計を指差すと、姉貴はコツンとフライパンを俺の頭に押し当てた。
文「あの時計。止まってるよ」
竹蔵「……あ?」
机の置時計を見ると、起きるには少し遅い時間になっていた。
▽
△
朝食をとって玄関へ向かうと、既に香音の靴がなかった。
そんなに学校に行きたかったんだろうか。
俺や姉貴と通学できるのを楽しみにしていたクセに……。
それも香音らしいな。
ピンポーン♪
呼び鈴が鳴る。どうせ近所の焚矢(たくや)だろう。
玄関のドアをあけると、案の定、そこには焚矢がいた。
焚矢「なんだ竹蔵か」
竹蔵「俺で悪かったな」
焚矢「一人か? さっきカオちゃんが走ってくのを見たけど。
一緒に登校するもんだと思ってた」
竹蔵「香音らしいな」
一緒に行きたい気持ちと早く行きたい気持ちが重なったんだろう。
あいつはじっとしていられないからなぁ。
文「あれ? 焚矢じゃない」
焚矢「ふ、文さん。お、おはようございます!」
ビシッ! と姿勢を正す焚矢。なんか弱みでも握られてるんだろーか。
文「ちょうど良かった。竹蔵を連れてってよ。始業式面倒だってサボりそうだし」
竹蔵「サボるわけねーだろ」
焚矢「わ、わかりました!」
俺の腕をガシッと掴む焚矢。やっぱり姉貴が苦手なんだな、こいつは。
姉貴は男勝りだからなぁ。その辺のヤンキーも頭を下げるくらいだし。
文「うん。焚矢はいい子だねぇ」
焚矢「そ、そ、そんなことは……。文さんも一緒に行きませんか?」
竹蔵「ええ~。姉貴とかよぉ」
俺が文句を言うとなぜか焚矢から肘で突かれた。
文「私? 私は真紀の所に寄って行くから」
焚矢「というと、紀野先輩でしたっけ?」
文「うん。真紀も朝が弱いからねぇ」
焚矢「わかりました。じゃあお先に」
文「うん。いってらっしゃい~」
焚矢に腕を引っ張られ、俺も家を後にした。
焚矢「いってらっしゃい、か……」
竹蔵「何をブツブツ言ってんだよ?」
焚矢「い、いや。別に……」
竹蔵「お前。姉貴の前でビクビクし過ぎだ」
焚矢「し、してないだろ!」
竹蔵「まぁ、あんな姉貴だからな。怖いのは分かる」
焚矢「怖がってないって」
竹蔵「そうなのか?」
焚矢「竹蔵には分からん」
俺を置いてスタスタと歩いていく焚矢。
なんか気に障ることでも言ったか? ……いや、言ってないな。
??「おい、待ちやがれ!」
竹蔵「なんだ?」
後ろからする声に振り向くと、目の前に拳が迫っていた。
頬をかすめながらもそれを避け、鞄で顔面を叩いてやった。
??「あぶっ!!」
そいつが尻餅をつくと、その後ろにはもう一人いた。
どこかで見たような見ていないような……。
焚矢「おい! やめろよ!」
俺より弱いクセに間に割ってはいる焚矢。
こいつはたまにこんな行動に出るんだよなぁ。
??「なんだお前は!?」
その声を聞いてやっと思い出した。
いつぞに喧嘩を売られて返り討ちにした不良どもだ。
あれだけやられてまだ向かってくるとは、いい根性をしている。
竹蔵「またやられに来たのか?」
不良A「うるせぇ! あの時はお前が木刀を持っていたからだ!」
竹蔵「剣道部員だから当たり前だろ」
不良B「今度は違うぜ!」
不良どもは鉄パイプを手にすると、不敵な笑みを浮かべた。
確かに今度は違うな。今日は部活が無いから木刀が無いし……。
不良A&B「死ねぇえええ!」
焚矢「うわっ! やめろ!!」
手始めに焚矢をやるつもりらしい。
不良二人は同時に鉄パイプを振り上げると、焚矢に向かってブン回した。
バキッ!
焚矢「竹蔵!?」
俺は右手のカバンと左腕で二つの鉄パイプを受け止めた。
右手はなんともないが、左腕に激痛が走った。
竹蔵「痛ぇなこの野郎!」
俺が不良Aに殴りかかると、不良Bの鉄パイプが左肩に食い込んだ。
それがわずかに頭にも当たったせいか、グラッと視界が歪んだ。
竹蔵「……ッ!」
不良A「これでオシマイだな?」
うずくまる俺に、不良Aが鉄パイプを高く掲げた。
焚矢「だからやめろって言ってるだろ!」
俺の前に出る焚矢。
竹蔵「馬鹿野郎! どけっ!」
焚矢「そういうわけにいくか!」
不良B「ならまとめてヤッてやる!」
不良ども鉄パイプを振りかざすと、何のためらいもなく俺たちに向けて振り下ろした。
竹蔵「くっそおお!」
玉砕覚悟で一人でも倒そうと俺も拳を握り締めた。その時だった――。
カランカラン。と鉄パイプが二本、地面に転がった。
よく見ると、不良どもの腕を姉貴ともう一人の女が捕まえていた。さっき言っていた真紀だ。
不良A「イデデデデッ!!」
不良B「な、なんだこの女どもは!?」
どれだけの握力なのか、不良どもは二人の手を外そうと試みるが、まったく外れない。
むしろ握られた腕の痛みにどんどん顔が歪んでいく。
真紀「面白いことしてるじゃないか、竹蔵?」
頭の上で束ねた髪を揺らしながら、愉快そうに笑う真紀。
俺はこの女が苦手だ。腕っ節はとんでもなく強いし、姉貴が二人いるみたいに感じる。
真紀「私も混ぜてもら――」
バキッ!
姉貴の放った回し蹴りが不良Bの背中にめり込んだ。
そのまま脳天にエルボーを決め、不良Bは地面に崩れた。
文「ハァ、ハァ……」
姉貴が顔を真っ赤にして怒っていたことに、俺は今やっと気が付いた。
真紀「あーあ。容赦ないねぇ」
不良A「な、なんだお前ら!?」
真紀「あ? 誰だっていいよ。それよりお前の相棒が弱すぎて萎えちまったじゃないか」
真紀は心底つまらなさそうにため息をついていた。
真紀「今日の気分は……右だな」
グリッ! と不良Aの腕の関節を無理やり右にねじ回した。
変に回った腕の指がビクビクと痙攣している。
不良A「うぎゃらぎゃあばばっ!!!」
声にならない声を上げる不良A。
真紀はその口をもう片方の手で掴んで黙らせた。
真紀「痛いか? 痛いだろうねぇ。……でもなぁ、おい。
目の前で弟が傷つけられた文に比べたら、こんなもん屁でもないよな?」
不良A「ぶ、ぶびばべん~!」
涙目で訴える不良Aに、真紀ねじ回した腕を容赦なく握った。
真紀「ダメだ。私の友人を傷つけた罪は重い。これはまだ試したことは無いが――」
不良A「い゛い゛い゛!?」
真紀「この腕。このまま一回転したら……千切れると思う?」
ねじ回った不良の腕。その腕を掴む真紀の手にぐっと力を込められる。
その刹那。不良Aは失禁して気絶してしまった。
真紀「これだから男ってやつは……」
不良の腕を放すと、真紀は焚矢の肩に手を置いた。
真紀「あんたも無謀だねぇ。体が幾つあっても足りやしないじゃないのさ」
焚矢「はぁ……でも、俺は――」
真紀「ま、なんだっていいよ。文のそばに居てやんな」
そう言って嬉しそう笑うと、ポンポンと焚矢の背中を叩く真紀。
それから俺の所へ来ると、真紀は俺の頭を掴んで無理やり立ち上がらせた。
俺の身体に激痛が走る。
真紀「キューキュー車でも呼んでやろうか?」
竹蔵「いらん! 何で姉貴はいつも俺の喧嘩に割って入ってくるんだ!」
文「…………」
焚矢「竹蔵!文さんはお前を心配して――」
俺に詰め寄ろうとする焚矢。真紀は手を広げてそれを制した。
そして腕を組むと、俺に向かって笑った。
真紀「ハッ。お前が弱いからに決まっているだろう?」
竹蔵「俺は、……弱くない!」
真紀「最弱だ。雑魚中の雑魚だ。ケヤキの棒でエックスタークに勝てるか?無理だろう?
それが私とお前の実力の差だ」
竹蔵「違う!」
真紀「違わない。お前はさっさと病院にでも運ばれて寝てろ」
真紀の手刀が振り下ろされる。
俺はそれを受け止めようと手を伸ばすが、その手刀は俺には捕らえられなかった。
その手刀が俺の首に当たると、一瞬のうちに意識が飛んだ。
この時ほど強くなりたいと思ったことは無い。
俺はもっと強く……誰よりも強くなりたい……。
その②へ
真紀を出した瞬間、主役が変わったように見えたのは目の錯覚だと信じたい。
文のモチーフがそもそも『TIME DIVER→翔馬』の真紀だったんですが……こうして並べると違ってくるもんですね~w
たまにはこうして何も考えずに書き殴りたくなるもんです。
ええもう、向こう見ずで書いてしまいましたよ。
その②ではタイトルの通りイト姫が出てくる予定ですが、前置きのように書くかどうかはわかりません。
挿絵イラストや挿絵漫画は待ってます!それプラス感想の人数で需要を測ろうかなと考え中です。
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無題
姉妹がいない私には、ハーレム的に見えますねw
ぶっちゃけ身内は、ハーレムとは違うとは思いますがw
学園ものが始まるかと思いきや、実はバトルものだった!
両方の混合な感じですかね。
姉さん強いですなぁ・・・
腕っぷし強い姉さんがいると、コンプレックス湧きそうですね。
これなんてエロゲ?でいいですよ?www
一話に一戦闘を必ず入れる取り決めで書いています。
だから百幕にもなると百戦書いたことになるんですね~w
>姉さん強いですなぁ・・・
>腕っぷし強い姉さんがいると、コンプレックス湧きそうですね。
でも強いお姉さんは書いてて楽しいですよ?w
シャズさんもどーですかー?w