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「ハァ~……帰りたくない」
学校が終わって帰る途中。
あたしは何度目かの大きなため息をついていた。
今朝、進路のことでお母さんとケンカしたからだ。
もう高校三年生。だけどこれからのことなんてちっとも分からない。
将来何になりたいとか何をしたいとか。全然思いつかない。
そういうのって、自然と出てくるもののはずだ。
この歳だから決めなきゃいけないなんてオカシイ気がする。
未来なんていつも不透明なものじゃないか。
あたしのお父さんはお母さんと違って寛容だ。
いつもあたしの味方でいてくれる。
今回もきっとそうだろう。
このまま帰るのも気が進まない(お母さんが怖い)し、お父さんのところへ行くことにした。
家の裏手にはお父さんのお店がある。
ひょっとしてお母さんが店番をしているかもしれない。
あたしはただいまも言わずに店の中に足を踏み入れた。
(お母さんには見つかりませんように……!)
店の中をぐるっと見て回るも誰の姿もない。
念のため外を見てみるも、やはり誰もいない。
車があるってことは家にいるはずだけど……。
店の奥に進む。
右へいけばトイレ。左へ行けば工場(こうば)だ。
たぶん、そのどちらかだろう。
(……工場かな、たぶん……)
あたしは廊下を左へ進み、工場のドアをあけた。
今日はまだ使っていないのか。
まったく換気されていないせいで蒸し暑い。
やっぱりトイレなのかとドアを閉めようとした時、本棚に見覚えのある背表紙を見つけた。
手にとってみると、それはあたしが小さい頃に使っていたお絵描き帳だった。
「わ~っ!懐かしいー!」
小学生の時かそれよりも前のものか。
最初のページにはその頃好きだったロボットの絵が描かれている。
ひらがなで『だいがいおう』と。お父さんと見た昔のアニメだ。
パラパラと適当に見ていくと今見るのもちょっと恥ずかしいくらいの絵がたくさん描いてあった。
そこで家族の絵を発見した。
お爺ちゃんとお婆ちゃんが並び、その横にはお父さんとお母さん。
真ん中にいる小さいのがあたしだろう。
そしてその横には誰だか知らない人が描かれている。
(誰だろう?親戚の叔父さんとかかな?)
その後もあたしはアルバムを見るように懐かしい気持ちでお絵描き帳を見ていた。
当初の目的を忘れたまま、あたしは満足してお絵描き帳を本棚に戻した。
戻してからさっきと違う場所に置いたと気づくも、すぐにまぁいいやって思った。
お絵描き帳を棚の奥に押した時、何かカチリと音が鳴った。
「あれ?なん、――だああああ!?なんだこれ!?」
本棚が横にスライドすると、床に謎の隠し階段が現れた。
階段の足元には赤いライトが点滅している。
どこぞのSF映画でも見ている気分だ。
これ絶対、お父さんの趣味だよ。
階段があるのなら行くに決まっている。
もしかしたらお父さんもここにいるのかもしれないし。
「よし、行こう!」
慎重に階段を下りていく。
地下へ通じている割にすぐ突き当たり、ドアにたどり着く。
ここまでそれらしく作っておきながらドアノブが丸いことに拍子抜けしてしまった。
意を決してドアを開けると、部屋の真ん中にある大きな丸いオブジェがあたしの目に飛び込んできた。
こういうの、文化祭でサッカー部が似たようなものを作っていた気がする。
「お父さーん?」
ぐるっと丸いオブジェを回って部屋を一周するも、お父さんの姿はない。
ここはいったいなんなんだろう?
お父さんのことだから「秘密基地だ」と答えそうだけど。
それにしても暑い。
工場は締め切られたまま。地下も機械が作動中で熱を篭らせている。
天井の一角にエアコンを見つけると、あたしは辺りを見渡した。
机の上にリモコンが一つ。これに違いない。
ポチッ。
あたしは何の迷いも無くボタンを押した。
すると部屋の真ん中の丸いオブジェがプューと音と空気を吐き出して、真ん中のドアらしき部分が開閉した。
これはあの球体のリモコンだったのか。
それにしても何から何まで趣味的だ。
オブジェの中に入るとこれも機械だらけで中心にはパソコンとイスが置かれていた。
イスというよりロボットアニメで出てきそうな操縦座席だ。
あたしは何から何まで趣味の領域に感じていた。
こんなもの作って。まるで宇宙船の疑似体験マシーンじゃないか。
しかし部屋の中よりは涼しい。
これだけ宇宙船っぽいものなんだ。エアコンくらいあるはずだ。
熱にやられたあたしの頭はもう、涼しい所を探すくらいにしか働いていないようだ。
座席に座ると辺りを見渡した。
変なスイッチやらレバーやらがいっぱいだ。
とりあえず「冷房」の文字を探すあたし。
が、そんな文字は一つもない。
そんな中見つけたのは冷房ではなく「DRI 」の文字が。
「ドリ?……あ。エアコンの「ドライ」かー!」
やっと目当てのものを見つけたと嬉々してボタンを押すあたし。
「DRI 」と表示されていた部分が点滅しだし、「DRIVE」と表記された。
次第に機械音が激しくなっていく。
「あれ?ドライ……ブ?」
ドライブってことはこの機械が動いてしまったのか。
自動的に入り口が閉じられ、シートベルトをするように警告音が出る。
「あれ!?えっと、どれ?どうしよう!?」
元に戻そうにも分かるはずがない。
なんでこの手の機械モノは英語表記なんだ!
英語が苦手なあたしにわかるはずがない!
とりあえず、シートベルトを促されているからするけどさ!
カチンッ。
シートベルトをした瞬間、モニタの画面が赤から緑に変わった。
「クリアーくらいは読める。よし! 異常なしってことで!」
よくわからないけど、問題は何もないってことだろう。
問題がないならそれでいい。これだから機械は苦手だ。
やれやれと一息ついてと座席に頭を預けると、急激な睡魔に襲われてしまった。
こんなところで寝たら暑くて汗をいっぱいかいてしまうに決まっている。
けど、今だけは睡魔のほうが優先されてしまった。
けたたましく音を立てる機械も気にならないくらいに……。
▽
△
ガンガンガンッ!
ガンガンガンガンガンッ!
ガンッ!…………ベキンッ!!
なんだろう?うるさいなぁ~。
頭に響くような音とともにあたしは目を覚ました。
「動くな!」
いきなり眉間に銃を突きつけられる。
バイクのヘルメットを被った人物があたしに銃を向けていた。
こういう時、両手を挙げるものだけど、混乱から身体が動かない。
ただ目の前の人物が女であることはそのライダースーツからはっきりとわかる。
スタイルいいなぁ……。
「ここにいる以上、無関係とは言わせないぞ。なぜタイムマシン0014に乗っている!?」
「タイムマシン?」
「とぼけるな!このタイムマシンは過去に翔馬が使ったものだ!それをなぜお前が乗っている?」
「翔、馬……?」
聞いたことのある名前だ。
翔馬……翔馬……そうだ!思い出した!
あのあたしのお絵描き帳に描いてあった人だ。
どんな顔してたとか思い出せないけど、記憶の片隅にはその人の後姿しかない。
覚えていないけど、あたしにとって大切な思い出だ。
もしかしたら初恋の相手だったかもしれない。マジで!
「答えろ!」
痺れを切らしているのか、銃口が強くあたしの眉間に食い込む。
これはいつ撃たれてもおかしくない。
こんなところで死ぬなんてイヤだ!
「あ、あたしは。何も知らない! タイムマシンとか、そんなの!」
「じゃあなぜこれに乗っているんだ!?」
「分からないよ! 機械苦手だもん! 中で眠っちゃってたし!」
「私が研究施設を調べにきたこのタイミングが偶然だと言うのか?」
「だから知らないんだってば! 何であたしが銃を向けられなきゃならないのよ!
タイムマシンとか訳分かんないよ!!」
知らず知らずのうちに涙が流れてきた。
もうどうしたらいいか分かんない。
あたしはただこんな変な丸っこいのに乗ってただけなのに!
「……まったく。しょうがないねぇ」
そう言ってヘルメットを外すと、予想外にも見知った顔が現れた。
「……お母さん!!」
あたしの言葉にお母さんは「ハァ~?」ともらした。
「誰がお母さんだ!?」
ベシッ!
お母さん得意のチョップが頭上に落とされる。
「いったぁ~! もう、お母さんはお母さんでしょ?」
「息子はいても娘はいない! お前は誰だ!?」
娘に向かって誰だって……でも、お母さんのこの顔、本気だ。
タイムマシンって言ったっけ。ひょっとして遠い未来の親戚かな?
名前を聞けばわかるかも。
「ねぇ、お母さんじゃないなら誰なの?苗字は越野でしょ?」
「越野だぁ? 何でその名前が出る?」
「あれ?」
「まぁ、ホントに何も知らないみたいだからいいか。
私はの名前は紀野 真紀(きの まき)だよ」
紀野といえばそうだ。お母さんの旧姓だっけ。
っていうかお母さんって否定した人がお母さんと同じ名前名乗ってるじゃん!
見た目も名前もお母さん。だけど、お母さんじゃない……?
もう、訳が分からない。
「……夢だわこりゃ」
「現実逃避するな!まったく……む?電話か」
お母さん(?)はあたしをチラッと見た後、電話に出た。
「おかしなことになった。お前の乗ったタイムマシンから変な小娘が出てきたぞ」
「変な小娘ぇ!?」
誰に電話してるか知らないけど、変な小娘ってあんた。それでも親か!?
「わかった。そっちに連れて行く。翔馬も気をつけるんだぞ」
「翔馬!?」
またその名前が出た。電話の相手はあたしの記憶の中にいる翔馬という人。
あれ?でも、お母さんはあたしのお母さんであることを否定しているし、仮にこれがタイムマシンだとしたら。
その翔馬って人もあたしが知る人じゃないのかもしれない。
でも……確かめたい!
「聞いたとおりだ。お前は私に――」
「――付いて行く!!」
「なに? 目的は何だ?」
「翔馬って人に会いたいの! あたしの記憶にあるんだもの! 誰なのか確かめたい!」
「……妙なことしたら殺すからな」
「しないってば!」
「まぁ、いい。それより、その……私のことをお母さんと呼ぶのは許さん」
「やっぱり、お母さんじゃないの?」
「当たり前だ!」
どこからどう見てもお母さんなのに。
むしろお母さんじゃない部分の方が見当たらないくらいだ。
「それで、お前は誰だ? 名前くらい名乗ってもいいんじゃないか?」
「え、あたし?」
母親を前に名乗れってすごい変な気分。
「越野 真絢(こしの まあや)」
「な、なんだって!?」
「越野 真絢! 名前は選べないんだから、文句なんか言わないでよ」
「それは……そうだが……」
なんだろう?
名前を名乗ったらいつものお母さんみたいな顔になった気がする。
でも、お母さんじゃない。不思議な気分。
あたしはお母さんと一緒に丸い物体から出ると、改めて仰ぎ見た。
タイムマシン。時を超える乗り物。
そんなもの、本当に存在するんだろうか。
この時のあたしは気づいていなかった。
そのタイムマシンのせいで妙な事件に巻き込まれていくことに……。
プロローグ『TIME LEAPER↑真絢』
無題
でも……私が女子高生で眠りから覚めていきなり銃口突き付けられたら怖いですわ(苦笑)
Re:無題
偶然にもこんな予定にw
起き抜けは反応鈍い子なんです(´・ω・`)
僕も眠りから覚めていきなり女子高生に唇突きつけられたいですね(`・ω・´)v