ブログ小説『現代版竹蔵武勇伝~竹蔵とお母さん~』
竹蔵「へー母親が帰ってくるのか」
文「コラ。お母さんでしょ」
ベコンッとまな板で頭を叩かれる。右手の包丁じゃないだけマシだけど。
俺の両親は基本的に家にはいない。
母親は妙なボランティア団体に入って飛び回ってるし、父親は設定の枠外。
だから家のことは姉貴がやっているんだが……。
竹蔵「何で帰ってくるんだよ?」
文「自分の家に帰って来るのに理由がいるの?」
竹蔵「…………」
文「あんたも強情だねぇ。普段は家に居ないから寂しいんだろうけど」
竹蔵「俺は別に……香音の方が寂しいんじゃないか?」
文「香音は……どうなんだろ?」
~回想~
香音「おかーさーん! 行ってらっしゃーい」
母「やーん。カオーン!お母さん今帰ってきたところなんだよー」
香音「早くアシカ飼いたいね~♪」
母「うん。いつか飼おうね~♪」
~回想終わり~
文「『快く見送ったらアシカを飼う』って約束してから寂しくないみたい」
竹蔵「あいつは本当に……」
文「それまでは寂しがってたのにねぇ」
竹蔵「でも俺は別に寂しくないぞ」
文「はいはい。今はそれでいいよ」
竹蔵「どういう意味だ?」
文「お母さんは私らのことが凄く大好きなのよ。
竹蔵が寂しいって聞いたら、もうお仕事にいけなくなるくらいに。
お母さん凄く楽しそうだから、邪魔したくないんだ」
竹蔵「どうかな?母親は女には甘いけど、俺は男だし」
文「何よアンタ? 甘えたいの?」
竹蔵「話聞け。誰がそんなこと言った?」
文「強情」
竹蔵「俺が言いたいのは姉貴や香音ならともかく、俺のことは大して気にかけてないってことだ」
文「あんた……ホントに馬鹿だねぇ」
竹蔵「うるせぇ。今じゃ居ないのが当たり前なんだよ」
文「ふーん」
文「いつだったか、小学校で授業参観あったよね。私が行ったヤツ」
竹蔵「俺の授業参観に姉貴が来たヤツか……あれは恥ずかしかったぞ」
文「香音だけ教室で授業じゃなくて講堂で演劇の発表だったでしょ?
お母さん夢中になってて途中で抜けだせなかったのよね」
竹蔵「だから姉貴が代わりにきたのかよ? なんで抜け出せないって分かったんだ?」
文「私の席は窓際だったし、講堂の入り口でお母さん探してたからさ。
お母さんなかなか出てこないから、竹蔵が寂しいんじゃないかって思ったのよ」
竹蔵「あの時も言っただろ? 別に、大丈夫だって」
文「お母さんからしたら、あんたの「大丈夫だ」は大丈夫に見えなかったんだろうねぇ。
しばらくずっと竹蔵にベッタリだったじゃない」
竹蔵「……覚えてねぇな、そんなこと」
文「もう、ホントにしょうがない子ねぇ……」
ピンポーン♪
竹蔵「イトかな?」
文「ちょっと、いつからそんな関係になったのよ?」
竹蔵「グループ学習で課題やるんだよ。焚矢も来るしな」
文「ふ~ん。気を利かせて焚矢くん連れて家を出てあげようか?」
竹蔵「余計なことすんな。焚矢も嫌がると思うぞ、姉貴じゃ」
文「うるさいねぇ。いいから早く行きなさいよ」
竹蔵「へいへい」
竹蔵「よう、待たせたな」
イト「遅いぞ竹蔵ー!」
竹蔵「ちょっと姉貴と――って、何やってんだ!?」
見ると玄関先でイトが女に抱き締められていた。
イトは抵抗しないどころか抱き返している。
母「ただいまー息子ー!」
イト「竹蔵のお母さんじゃろう?」
竹蔵「玄関先で何やってんだよ!」
母「だぁって、イトさん可愛いんだも~ん」
またそれか。ホントに相変わらずだな、おい。
母「イトさんのようなガールフレンドがいたら安心だね」
竹蔵「割りと悩みの種だけどな」
母「イトさんは悪くない! こんなに可愛いのよ!」
イト「そうじゃそうじゃー!」
竹蔵「理由になってねぇだろ」
母親はイトから離れて俺の前に立つと、両手を広げた。
母「抱き締めすぎたから少し返そうか?」
竹蔵「意味がわからん。そういうのイヤだって言っただろ」
母「昔はいっぱい抱き締めてあげたのになぁ~」
イト「ふむふむ。竹蔵は甘えん坊じゃのう」
竹蔵「うんと大昔だ」
母「そんなに大昔じゃないでしょ? お母さんがまだ17歳の頃だったかしら?」
竹蔵「そんな戦前の話わかるかよ」
母「竹蔵?あとで校長室!」
竹蔵「……意味がわからん」
母「でもイトさんがいるから安心した。私の代わりに竹蔵を抱き締めてあげてね?」
イト「わ、わしらはそのぉ~。まだそういう関係ではないというか……」
竹蔵「まだってなんだよ、まだって」
イト「竹蔵。久し振りの帰郷と聞いたぞ。抱き締めてやってもよかろう。
息子と会えなくて寂しい思いをしているのじゃぞ?」
母「萌え!この話し方だけでご飯三杯いける!」
竹蔵「……こんなのを抱くのかよ」
またイトに抱きついてやがる。
ホントに寂しいのだろうか。俺にはそうは見えんな。
イト「竹蔵の母上も寂しかったであろう?」
母「え?ぜんぜん?」
ホントに全然寂しくないという顔で手を振ってみせる母親。
その態度になぜかムカムカしてきた。別に寂しいないならそれでいいじゃないか。
竹蔵「寂しくないなら帰って来るなよ!」
イト「た、竹蔵!?」
なぜこんなことを言っているのかわからない。
帰って来るなと、本心でもないことを口にして、胸が痛んでいる。
――くそっ!いつもいないクセに。なんなんだよ……。
イト「それはヒドイぞ竹蔵!」
母「いいのよ。竹蔵がそう思っても仕方ないわ」
竹蔵「…………」
母「寂しいって思ったら寂しくなるでしょう?だから寂しくないの。
遠く離れていても、私には息子がいる。それだけで心強いし、嬉しいの」
竹蔵「なんだよそれ。上手くまとめたつもりか?」
イト「こりゃ、竹蔵。少しは分かってやらぬか」
母「いいのよ。私の代わりに抱き締めてあげてね、イトさん」
イト「竹蔵はあれでシャイじゃからのう。なかなか難しいが……」
竹蔵「なんの話だ?」
母「ああ。やっぱりねぇ」
イト「抱き締めて突き放されても傷つくしな」
母「イトさんにそんなことしたら許さないわよ竹蔵?」
話がどんどん逸れていく。
二人の会話に疲れていると、家の中から足音が響いた。
間違いなく、妹の香音だろう。
香音「竹兄ぃー!」
いつものように後から俺に飛びつく香音。
その様をじぃーと見るイトと母親。
母&イト「シスコンだ!!」
竹蔵「なんでそうなるんだよ!!」
イト「まったく抵抗しておらんではないか!!」
母「母はよくて妹ならいいだなんて……」
香音「あー。イト姉ぇねに桃子マーマだー!」
俺から離れて二人に抱きつく香音。
なんなんだろうな、この展開は。
香音「桃子マーマ。いってらっしゃい」
竹蔵「だから帰ったばかりで追い出すな」
母「竹蔵。……いいの?帰っても」
竹蔵「いいに決まってるだろう」
母「だってさっき帰ってくるなって言ったー」
竹蔵「うるせぇな~」
イト「竹蔵も帰ってきて嬉しいんじゃな」
竹蔵「あー、はいはい」
母「でも……香音がいるならもう仕事行かない!」
香音「あはははは☆香音も桃子マーマいるなら学校行かないー!」
母「ん。許す!」
竹蔵「いや、休暇終わったら行けよ。香音も学校行けよな」
イト「竹蔵の母上は面白いのう」
竹蔵「変なだけだ」
イト「そんなことはないぞ。こんな家族に恵まれて、羨ましく思うぞ」
母「イトさん。竹蔵よりも私の嫁にならない?」
竹蔵「……こんなのだぞ?」
イト「うむ。考えておこう」
母「やったー!」
竹蔵「お前なぁ……」
イト「良いではないか。家族サービスじゃ」
竹蔵「家族、ねぇ……」
母「あ。文ちゃんも抱き締めなくちゃ!」
竹蔵「ホントに嬉しそうだな……」
母「うん!」
イト「わしも抱き締めてこよう♪」
竹蔵「変な影響受けてるぞ」
やれやれとため息をつきつつ、俺たちは家の中に入った。
しょうがないから。次に家を出るときは大丈夫以外の言葉で見送ってやろうか。
というわけで竹蔵の母親を出してみました。
名前はももこさんからお借りしましたけど、よかったのかしら?←無許可w
わりと僕とももこさんのトレースはいってますが、まぁそこはご愛嬌ということでw
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無題
お父さんがひたすらに可哀想www
メタ的な事があったようなw
お母さんが誰かに求婚すると、お父さんはどうしたって思う事がたまにあります。
お父さんは星になったんでしょうかw
イトさんが可愛かったですw
もうそれだけで私は満足です!
竹蔵リア充ですね。 爆発しろ!
Re:無題
父親はまぁいる設定だけど出さない設定と言いましょうかw
本編と同じく文を母親代わりにしたかったので。