竹蔵「……あ? 何してんだ二人とも?」
城内の調理場でイトとアイリーンを見つけた。
アイリーン「む、竹蔵は調理場で洗濯をするのか?」
イト「わしらで昼食を用意しようと思ってのう」
竹蔵「へー、二人とも料理できんのかよ?」
そういえばさっき、コック達がそわそわして中庭にいたっけ。
この二人に刃物は不相応なイメージがあるな。
アイリーン「私とイト殿の合作料理じゃ。これを口にできるとは、竹蔵は幸せ者じゃぞ?」
イト「アイリーン殿は料理が得意と聞いてのう。好物もわしと同じなのじゃ」
竹蔵「ふーん。んじゃ、期待して待ってるかな」
リシュワットの料理を食べた時、とんでもなく美味かった。
この国は食材も豊富だ。これはかなり期待できそうだな。
アイリーン「イト殿がおぬしの為に丹精込めて作ろうと言うのじゃぞ?」
イト「ア、アイリーン殿!!」
竹蔵「あ? とにかく、できたら呼んでくれよな」
よく分からない料理の香が鼻についていたが、とりあえずこの場をあとにした。
部屋に戻る途中、リシュワットと鉢合った。
俺を見ると妙な顔つきで俺の腕を引っ張った。
リシュワット「竹蔵。すぐニワシノ部屋へ来イ」
竹蔵「あ?何でだよ?」
リシュワット「先程中庭ニいるコック達ニ話ヲ聞いタ」
イトたちが料理をしている。という事だろうか?
竹蔵「……だから?」
リシュワット「……………………」
何だか言葉を捜しているらしかった。
リシュワット「……コノ薬草ヲ煎じテ飲ムト良い」
竹蔵「何でだ?」
リシュワット「……………………」
竹蔵「………………?」
リシュワット「……か、体ノ具合が良くナル。心身トモに」
――なぜそれを今飲ませようとするんだ?
リシュワットがそこまで言うなら、飲まなくもないけど……。
イト「おーい、二人とも~!完成じゃ~! できたぞ~!」
遠くの方でイトが手を振っていた。
竹蔵「おっ!もうできたのか!行こうぜ、リシュワット」
リシュワット「ムッ、ムゥ…………」
イトの料理に期待して、俺とリシュワットは食堂へ向かった。
テーブルの上には見たことのない料理が並んでいた。
多少は変な感じもするが、それは俺の国の基準だ。見かけで判断はしない。
竹蔵「さて、まずはスープってやつか」
ズズッ……。
竹蔵「……………………????」
俺は何も言わずリシュワットを見た。黙々と食べている。
何かの間違いだと他の料理を口にした。
パクッ。モグモ――グ、モ…………グ…………????
喉を通る前に吐き気に襲われた。
――おい。どう考えても不味いだろコレ。
何かの冗談か、そうでなければ俺を毒殺しようと目論んでいるとしか思えない。
竹蔵「おい、イト――」
イト「何じゃ?」
そこには満面の笑みで俺の感想を期待するイトがいた。アイリーンも同様だ。
この二人は自分の料理が不味いなどとは全く思っちゃいない。
――こ、こういう事か。
この場では、不味いのマの字だって言う事は許されないのだと悟った。
リシュワットなんて変な汗をかきながら食ってるし。
竹蔵「リシュワット?」
リシュワット「……何も言うナ、竹蔵」
さっきリシュワットが薬草を勧めたのはこういう事かよ。
竹蔵「……分かった、リシュワット」
俺もリシュワットに習って手を進めた。
飲み込む前に吐き気とかとんでもないが、食うしかないんだ。
俺達は永遠にも等しい時間を過ごす気分で食べ続けていた。
イト「どうじゃ、二人とも?」
アイリーン「美味かろう?」
なぜこの料理でここまでいい笑顔を向けるんだろうか……。
竹蔵「……お前ら、味見したかよ?」
イト「いや。竹蔵もリシュワットも腹をすかせておると思ってのう。急いでたくさん作ったのじゃ」
アイリーン「どうじゃ?美味かろう?」
味見しろよ! ……と、言いたくて仕方が無い。
リシュワット「流石、デございマス……」
それでもそんなセリフが出るリシュワットは凄いよ。ある意味だけど。
イト「竹蔵はどうじゃ?」
竹蔵「……うめーよ。チクショウ」
俺の言葉に本気で嬉しそうな顔をするイトとアイリーン。
イト「それは良かった!アイリーン殿がいて良かったのう」
アイリーン「いやいや、イト殿の料理の腕前じゃ。よいセンスをしておる」
イト「そ、そうかのぅ?」
アイリーン「うむ。良い母になれるのう」
そんな華やかな会話をよそに、俺とリシュワットは黙々と食べ続けた。
大量の水を流し込みながら食べているせいか、水のおかわりが尋常じゃないぞ。
イト「……さて、わしらも食べるか」
アイリーン「うむ。そうじゃな」
その言葉を聞き、リシュワットの目が光った。
食べるペースが一気に加速する。その姿、まさに鬼神の如く、だ。
――チッ、やっぱそうなるのかよ!!
それが何を意味しているのか察すると、俺も仕方なくペースを上げた。
イトとアイリーンが手を付ける前に、俺達はガツガツと食べ続ける。
そして、あっという間に俺とリシュワットだけで完食してしまった。
イト「何じゃ、わしらの分がないではないか」
アイリーン「それほど美味しかったという事じゃな♪」
イト「ふむ、仕方ない。コックを呼んでわしらの分を作ってもらうか」
アイリーン「うむ、そうしよう!」
二人は上機嫌になりながらコックを呼びに中庭へ行ってしまった。
リシュワット「……………………」
竹蔵「……………………」
ガシッ!
俺達は何かをやり切った事で手を握り合った。
そしてそのままテーブルに突っ伏した。
遠のく意識の中、リシュワットの凄さとイトの料理の凄まじさをかみ締めていた…………。
竹蔵武勇伝†他~我等ニ食エヌ物無シ~・完
PR
無題
すんごくヘタかのどちらかでしょう!!
中庸はナシ! です(笑) きわめてナンボ。
でもにこやかにメシを勧めるお二方が素晴らしい。ある意味コワい。
それにしても相変わらずリシュワット&竹蔵、漢ですね~。
いつでも愛する女性を救うために一生懸命な
この人達が大好きですよ~。
無駄イ
が、欠点がチャームポイントだったり、頑張って苦手を克服する様が好きなので料理下手にw
でもお茶を淹れるのは上手いんですよイト姫w
早く続きを書きたいんですがね~なかなかw