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本編無いクセに竹蔵武勇伝並にブログ小説が多いという摩訶不思議現象w
ブログ小説『-抜然人活劇- イナ ~イナと王子~』
城を出て数日後。
あたしは小さな村の道具屋を見ていた。
イナ「薬草と毒消し草は分かるが、満月草ってなんじゃ?」
似たような草を並べて、店主のおばちゃんに聞いてみた。
おばちゃん「満月草は麻痺が治るんだよ」
イナ「なるほどのう。なら一つ買っていくか」
おばちゃん「まいどあり。盾もあるけどどうだい?」
おばちゃんが出したのは年季の入った革の盾だった。これならない方がいい。
とっさに盾で守るくらいなら、即座にバッサリ斬った方が早いから。
????「女戦士さんならビキニアーマーなどいかがでしょう?」
横から顔を覗かせたのは変な男。
おばちゃん「うちには無いよ!わたしのお古ならあるけど」
イナ「いや、防具を変えるつもりはない。」
それよりおばちゃんのお古というのも不安なものじゃな。
火鬼仁アーマーとはなんとも強そうな名前じゃが。
????「それよりイナちゃん。あっちの宿屋でお楽しみしないかい?」
自分の名を口にされ、とっさに男から離れた。それでなくても男は苦手じゃ。
巨大な剣、斬巌刀に右手を添えた。
イナ「何者じゃ?」
????「……え、俺を覚えてないの?」
なんとも間抜けな顔で自分を指差す男。
派手な赤いマントの下にきらびやかな装飾がされている鎧。
その腰にはロングソードが下げられている。
イナ「そんな装備した男は知らぬ!」
????「装備で覚えるのかよぅ。俺だよ俺」
顔を近づけてくる男に、斬巌刀を向けた
????「わわっ! タンマタンマ!!」
イナ「斬られたいのか?」
両手を挙げて降参する姿がなんとも情けない。
????「や~れやれ。隣国の王子を、しかも色男の顔を忘れるかねぇ~」
――隣国の王子?
????「イナちゃんのドレス姿も可愛かったけど、鎧も似合ってるよ」
そのセリフでやっと思い出した。
イナ「お前、ゾンネブルクの王子!名前はロ、ロ、ロ~」
“ロ”まで出てるのに全然思い出せない。
イナ「何だっけ?ロバート・ガルーシャ・ゾンネブルク?」
????「惜しい!ロイだ。ロイ・アイソリッド・ゾンネブルクだよ」
全然惜しくない。見事に“ロ”しか合っていなかった。
現ゾンネブルク王と同じロイという名であった。
イナ「王子がこんな所で何をしておるのじゃ?」
ロイ「そういうイナちゃんも王女じゃないか」
イナ「大きな声で言うな!お忍びじゃぞ!」
ロイ「俺だってお忍びさ」
だったら尚更口にするなといいたい。
イナ「おぬしは第一王子であろう?」
ロイ「イナちゃんも第一王女でしょ?」
こやつは第一王子=第一王位継承者の自覚がないのか。
イナ「国を思うのなら、国へ帰って勉強なりなんなりせぬか!」
ロイ「説得力が無いねぇ」
イナ「あたしはいいの!全国行脚で見聞を広めるのじゃ」
ロイ「じゃあ俺も見聞を広める!イナちゃんに着いて行くよ」
あたしは斬巌刀を凪いだ。チリッとロイの服が斬れる。
それでも顔色一つ変えないのは認めてやろう。
イナ「あたしは一人で充分。それに弱い男と旅をするのはゴメンじゃ!」
ロイ「なんだまだ男が苦手なのかい?そんなの俺が治してやるさぁ」
イナ「く、来るな!」
ロイ「それに、俺は弱くないよ。女のキミに負ける気はサラサラないね」
ぶちんっ!
堪忍袋の尾が切れた。あたしは男女差別する男は大嫌いなんだ!
イナ「いい度胸じゃ!剣を取れ!」
あたしが店から離れると、ロイもそれに従った。
ロイ「女の子に刃を向けるのは――あ、危なっ!マジかよ!?」
斬巌刀の一振りを腰の剣で受け止めるロイ。
咄嗟の反応は悪くは無いが、あたしより強いとは到底思えない。
もう勝負は見えている。
ロイ「仕方ない。俺が勝ったらビキニアーマーだぜ?」
イナ「望むところじゃ!」
ロイのロングソードがあたしに伸びてきた。
思ったよりも早い剣を、後ろへ飛んで避けた。
こやつ、剣で刺す戦法か!刀身が見た目以上に伸びて見える。
あたしは着地後すぐに斬巌刀を振り上げた。この距離でも充分に届く。
ロイ「何の! まだまだこれから――――」
パキンッ!
ロイ「あらら~!?」
ロイの剣が二つに折れる。当然じゃ。我が剣に断てぬ物無し。
最初の一刀で既に折れかかっていたのじゃ。
イナ「もらった!斬巌刀・水憐!!」
水の如く速い剣でロイを追い詰めた。
しかし、あたしはその寸前で剣を止めた。
ロイ「とんだ冒険百連発だな」
あたしの喉元にはロイに握られた槍が向けられていた。
槍を隠し持っていることに驚いたが、それを一瞬のうちに突いてくる技量にも驚いていた。
ロイ「奥義・青龍槍。こいつで貫けない物は無いんでね」
イナ「ぬかせ。我が剣に断てぬ物は無い。そんな槍、首を振ればかわせるわ」
事実、あたしの剣はロイの頭を捕らえているのに対し、ロイの槍はあたしの細い首だ。
どちらも退かなかったとしたら、あたしの方が上手く避けられる。
ただ、ロイの狙いが故意に喉を目掛けていたとしたら話は別じゃ。
どて腹目掛けて突き出されていたなら、互いに無事には済まない。
ロイの狙いが引き分けなら、首を狙った理由がつく。
ロイ「……ま、勝利の花は君に譲るよ」
その事に対し、特に弁明しない。
そこは武人らしくて悪くは無いな。
イナ「良かろう」
ロイ「しかし、だ。その蕾は欲しいねぇ」
いつの間にか後ろであたしの尻を突くロイ。
背筋に悪寒が走り、再び怒りが込み上げてきた。
イナ「斬るっ!!!!」
ロイは斬巌刀の切っ先から逃れると、既にはるか遠くへ逃げていた。
ロイ「んじゃ、また会おうぜ!今度は仲間にしてくれよなぁ!」
あたしが追いかけようとする前に、ロイは走り去っしまった。
もはや敵はいないと思っていたのに、あんな男がいるとは思わなかった。
それよりもこの不快感が気に入らない。
だから男は苦手だし嫌いなのじゃ!
イナ「次に会う時はバッサリ斬っちゃるわい!!」
あたしはまた修行をするため、村を出ることにした。
店のおばちゃんがわざわざ奥から引っ張り出してくれたビキニアーマーを見ることも無く…………。
ロイ父「息子よ。何だって尻だけで胸も触らなかったんだよ?」
ロイ子「俺も思った。しかしな、鎧が邪魔だったんだよ」
ロイ父「甘いな。それでも女の羞恥心を揺さぶることはできるんだぜ?」
ロイ子「さすがは親父。国一番の色魔といわれた男だ。俺も負けてられないぜ」
ロイ父「見事この俺を超えてみせろよ?」