ブログ小説『-抜然人活劇- イナ ~イナと魔王~』
とある神殿で、あたしは自称大魔王と戦っていた。
魔王の両の手が禍々しい光を宿す。
そしてすべてを焼き尽くす業火があたしに向かって放たれた。
向かってくる魔法の炎を愛刀の斬巌刀で斬り裂き、魔王との間合いを詰めた。
次に、魔王が両手に暗黒の光を宿した時、あたしは剣でその光を断った。
魔王「なぜだ!? 我が魔力が!たかが剣如きに!」
驚愕する魔王にあたしは笑って答えた。
イナ「それはだって、『我に断てぬ物なし』だもの」
例え魔法でも魔王でも、断てない物は無い!それが師匠からの教え。
あたしは高らかに飛ぶと、斬巌刀を振りかざした。
イナ「届け! 鬼神の強さまで!!」
魔王「こしゃくな!」
魔王の両手が伸びる。それを紙一重でひるがえして避ける。
鋭い爪はあたしの頬と左足をかすめた。
イナ「チェストォー!!」
あたしの剣が魔王の体を頭から両断した。
魔王「ギッ、ガガ……」
物を言う事もできなくなった魔王はあっさりとその場に倒れた。
イナ「我が斬巌刀に断てぬ物無し!」
魔王はまばゆい光を放ちながら爆発を起こした。
肉片一つ残さず、魔王は消滅したようだ。
イナ「ふぅ。今回のはちょっと強かったかな」
自称大魔王もこれで四体目。
最初の二体こそ口だけだったけど、今回のは割と強かった。
ルイス「さすがはイナさん。助太刀するヒマもありませんでしたわ」
イナ「よく言うよ。物陰に隠れてたくせに」
隣国ゾンネブルクの王女、ルイス。
兄であるロイを探して旅をしているはずが、いつの間にか一緒に行動することになった。
ルイス「いえいえ、そんな……」
これでもそこそこに実力を持っているのだが、それよりも厄介なのは――。
ルイス「イナさんの勇姿に見惚れていただけですわ」
イナ「見惚れるな!」
フフフといや~な笑みを浮かべるルイス。思わず背筋が凍った。
そう、彼女は兄と同様に女が好きなんだ。女なのに……。
イナ「そ、それより!どうしてこんなに魔王がいるのかしらね?」
無理矢理話題を変えた。
大陸を渡ればそのつど一体は魔王が控えている気がする。
もしかしたあたしが魔王を倒すたびに現れるべき勇者が減ってるんじゃないだろうか?
イナ「世界は広い……ってことか」
ルイス「イナさんはどうして魔王と戦うのですの?」
イナ「そりゃ~強いのと戦ってみたいからね」
町の人も困っていたし。あたしも腕試しができて一石二鳥。
それに、あたしの師匠ならきっと同じ事をしたと思うから。
イナ「ルイスは? わざわざ着いて来るだけでも危険だと思うけど?」
ルイス「それは……」
少し物を思うルイス。
前の町で別行動してたときに何かあったかな?
ルイス「ここの魔王はたくさんの若い女性をさらって行ったんですのよ!」
――あ、そういうこと。
ルイス「さらわれた女性たちを助けて差し上げれば!一人くらいは!」
ホントに思考がナンパ男なルイス。
そんな理由でここまで来るのも馬鹿げているが、そんな理由だからこそ、ルイスは無傷でここまできているのだ。
こういうことが絡むと、彼女の棒術のキレは格段に増すのである。
ルイス「さぁ、イナさん! 若い美女のみなさんを助けに行きましょう!」
若いに美女が付け足され、ルイスは嬉しそうに先へ進んだ。
魔王のコレクションだろうか。金銀財宝から珍しいアイテムまで置かれていた。
所謂、魔王を倒した後のご褒美と言われるお宝だ。
もっとも、あたしには斬巌刀があるし、防具も今ので充分。特に欲しいアイテムはない。
ルイス「イナさん! さらわれた私の美女たちがいません!」
イナ「勝手に自分のものにするなよ」
ルイスに至ってはそんな物より女の方にしか興味が無い。
まぁ私たちは元々王家の人間だから、そこまでお金に興味がないのかもしれない。
質素な旅も慣れたもんだし。
ルイス「イナさん!この奥に!」
いつの間にか扉を見つけるルイス。
こういう時はホントに鼻が利くのね……。
イナ「下がってルイス。こんな扉、一太刀あれば――」
ゴスッ!ゴス!ゴス!ゴス!
あたしの言葉を聞く前に棒を扉に打ち付けるルイス。
その表情は真剣そのもの。
イナ「いや、あのルイス? あたしの一刀でね?」
ゴスゴスゴスゴスゴスゴス!
イナ「……ルイス?」
ダメだ。全然聞いてない。
ドゴンッ!
そしてとうとう、ルイスは扉を粉砕してしまった。
その棒術の技があれば魔王も容易く倒せてしまいそうだ。
ルイス「さぁもう大丈夫ですわ。私が助けに参りました!」
あたしもいるけどね。
扉の向こうはやや暗がりになっているが、確かにさらわれた人らしいシルエットが見える。
ルイス「さぁ、怖がらずに。ここから脱出しましょう」
闇の向こうでパチクリと瞬きするのが見える。
長い髪を揺らせ、ダダッとルイスの方へ走り出す女性たち。
女の子たち『うわああ~ん』
ルイスは「私の胸に飛び込んでらっしゃい」と言わんばかりに両手を広げて彼女たちを迎えた。
ルイス「さぁ、私の胸に飛び込んで!」
――あ、ホントに言ってるわ。
しかし、ルイスは大人の女性なら抱き締めていたであろう場所を空振り、足下に群がる子どもたちを目にした。
そう。連れ去られたのは子どもたち。
この中には女の子もいるから“女性”という言い方に間違いはない。
イナ「7、8……よし。全員無事だ」
ルイス「イナさ~~~ん」
物凄く残念そうな顔であたしを見るルイス。
あたしは知らない!悪くない!助けることができたならそれでいい!
ルイスを無視していると、ルイスは助けた女の子をじっと見つめていた。
ルイス「大きくなったらお姉さんの所に来なさいね?それともあなた、お姉さんいる?」
……あざとい。ここまであざといのかルイス。
イナ「ホラッ! さっさと行くよ!」
あたしたちは全員。魔王のアジトから脱出した。
途中で何度も子ども達を励ましているルイスを見ていると、あれであの性格が無ければなぁと思う。
大きくなったら……とか思ってるんだろうなぁ。
ルイスが魔王になって女性たちをさらっていかないことを祈る。
町に戻ると、私たちは手厚く歓迎された。
そして夜。宿屋に着いて夜が更けた頃。
あたしの本当の戦いが始まった。
パジャマに身を包んだあたしとルイスは互いの得物だけを持って対峙していた。
イナ「ルイス!自分の部屋に戻って!あとパジャマのボタンしてよ!」
あたしもルイスも寝巻き用のパジャマを着ているのだが、ルイスは上から真ん中までのボタンを外している。
なんで外してるかって?
そんなの考えたくない!!
ルイス「だって、誰も私の部屋に来ないんですのよ?」
イナ「知るかー!」
ルイス「今日こそは夜這いさせて頂きます!」
イナ「真顔で堂々と言うなー!」
ルイスに向かって斬巌刀を振り下ろす。
それを棍棒の先で受け止めると、ルイスはその反動を利用して体を反転させた。
剣を振り下ろした状態の私の目前にルイスの棒が現れる。
一旦、剣から手を離し、それをなんとか避けると、あたしは再び剣を手にした。
――あたしを狙ってる時の方が格段に強いじゃない!
ルイス「今日こそはイナさんを私のものに!」
更にスピードを上げるルイス。こいつの欲望は底無しか!?
しかし、身の危険が迫るほど、私もそれ以上の力を出せる。
男でも女でも、辱められるのだけは許せないんだ!
イナ「斬巌刀・疾風怒濤!」
斬巌刀を激しく叩き付ける。それに生じた風の息吹がルイスを襲う。
ルイス「まだまだこれからですわ!」
ルイスは棍棒を回転させ、風の流れを分散させた。
その隙に、一気に間合いを詰めた。
イナ「疾風怒濤と言った!」
回転するルイスの棍棒。その中心を見極め、剣で押し退けた。
棒はルイスの手を離れ、天井へ突き刺さった。
ルイス「しまった!」
あたしの剣は再び風を巻き起こし、ルイスの体を切り裂いた。
……と言っても、服を破いただけだけど。
あたしもルイスも、最初から殺気を持って戦っていたわけじゃない。
イナ「あたしの勝ちね」
ルイス「そんなぁ~」
ガックリと項垂れるルイス。
ルイス「わかりましたわ」
そう言って立ち上がると、ボロボロになった服を脱ぎだすルイス。
あたしより大きな胸が露になる。
イナ「ええっ!?」
ルイス「私は負けましたもの。好きにしてください。さぁさぁ」
潤んだ瞳で、じりじりとあたしに近寄ってくるルイス。
ぞわぞわぞわ~。
今までに無い悪寒があたしを振るわせた。
イナ「何でそうなるんだあああ!」
あたしは斬巌刀で再び風を巻き起こすと、ルイスを部屋から追い出した。
すぐに鍵を閉めると、外からドンドンと扉を叩くルイス。
ルイス「イナさぁ~ん!」
イナ「頼むから一人で寝てよぉ! もう~!!」
あたしはその場に座り込んだ。
ルイスを相手にするくらいなら魔王100匹をまとめて相手にした方がましだわ!
夜のルイスは魔王よりタチが悪い!
あたしは今夜も斬巌刀を抱えたまま寝ることになったのだった……。
ルイス「イナさんって、ツンデレですのねぇ」
イナ「ツン、……なんだって?」
ルイス「そろそろ私にデレてくれてる頃ですわね」
イナ「……あのさ、顔赤らめないでくれる?」
ももこさんより頂きました。
パジャマ姿のイナです^^
イナ不眠症になるんじゃね!と思ったアナタ!
ルイスは夜遊びしてる日が多いので安眠できる日の方が多いんですよきっと!
それに一度追い返したらもう来ないのがルイスのマナーかもしれない!
正直そこまで考えた無かった!w
ホントはルイスとのやりとりだけにするつもりでしたが、ひさしくイナを戦わせてなかったのでバトルにw
もうね。ルイスのせいで前半のバトルの印象がすっとんでしまいましたよ!!w
抜然人活劇なのにねぇ……(--;)
「届け! 鬼神の強さまで!!」とかイナに言わせたかったセリフだったんですが……覚えているでしょうかw
ルイス効果で打ち消されている気がするね、やっぱw
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無題
初見でも楽しめる構成で助かりました。
ルイスの暴走っぷりがすごいですな。
なんというか、禁書・レールガンの黒子みたい。
立ち場的なのはそこそこ似てました。
まぁ、黒子の方は一人のみ対象なのでマシですね。
斬巌刀は「ざんがんとう」でしょうか。
揉だい
過去の方にイラストなどありますので参考までにどうぞw
禁書レールガンはわかりませんがw
こういうキャラは扱いやすくて逆に自分の人間性を疑ってしまいましたw
>斬巌刀は「ざんがんとう」でしょうか。
正解です^^
巌すら斬る刀ということでw
初見だと分からないですよね~^^;
この剣はFF7のクラウドの武器くらいの超大剣なんですがねw