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お久しぶりのブログ小説です。
試験的にイナの語尾の「~じゃ」を止めてみました。
イナ「相手とぶつかりあい、己が信念を貫くことも大事だ。
しかし、耳を傾けることができねば、その信念が伝わることはないだろう。
人はそれを、“和解”と言う……」
喧嘩していた二人が同時にあたしを指差した。
男A&B『貴様、何者だ!』
あたしは ぶわぁさっ!!とマントの音を立て、二人を指差した。
イナ「我はイナ!イナ・シルバチオ・ボルダーン!喧嘩を断つ剣なり!!」
そして愛刀の斬巌刀を振りかざした。
キラリと輝くあたしの剣は長さも太さもそんじょそこらの剣以上だ。
いきなり現われて剣を振りかざすあたしに、二人は後ずさった。
男A「お前には関係ないだろ!」
男B「そ、そうだそうだ!」
もっともな主張をする二人。確かにあたしには関係のないこと。
しかし、だからといって店の中で暴れていい理由は無い。
イナ「分かった。じゃあアンタたちは――」
スーッと斬巌刀を水平に構え、カウンターを蹴って二人の男に飛び掛った。
イナ「――外で喧嘩してろっ!」
男A「あ、あ、あ危なぁ!?」
男B「き、斬られる!!」
あたしは斬巌刀を振りかざし、男たちに向けて振り抜いた。
イナ「斬巌刀・疾風怒濤!!」
斬巌刀が生み出したのは剣の風。
その巨大な剣が生み出した風は男二人を店の外へ吹き飛ばした。
あたしは丸腰の相手を殺したりはしない。相手が弱いのなら尚更だ。
イナ「まったく。これだから男は……」
しかしこの技を使うとあたしの長い髪が高確率で首に巻きついてしまう。
少し苦しい。髪を切りたくはないが、伸ばしすぎだろうか?
いや、それよりも今の登場と名乗りはかっこよかった!
練習してきたかいがあったものだ。
首に絡まった髪を解きながら、そんなことを思った。
????「凄いですねぇ。さすがはイナさん♪」
やたらと軽い声があたしに向けられた。
イナ「ん?アンタはだ、れれぇ!?」
振り向くと思わず声を上げてしまった。
後ろにはいつの間にか女の子が立っていたのだが、あたしの目の高さに彼女の大きな胸が見えていた。
それがまた見たことのないほどの大きさなものだからホントに驚いてしまったのだ。
あたしも最近大きくなってきたが、比べ物にならないくらいだ。
イナ「だ、誰よ? どこかであったっけ? 八百屋か??」
自分で言ってその胸がスイカかメロンに見えてきた。
????「お忘れですか? 一度だけ会ったことがあるんですよ?」
そう言われてじっくり顔を見てみるが、やはり思い出せない。
あたしは彼女に耳打ちしようと、チョイチョイと指を動かした。
????「なんですか?」
イナ「あたしの背じゃ耳までとどかないの。ちょっとかがんでよ」
あたしに言われて屈む彼女。それでも微妙に届かないため、あたしは背伸びをした。
イナ「アンタ、どっかのお姫様?」
????「正解です♪私はルイス・アス・ゾンネブルクです」
なんと隣国のゾンネブルクの王女だった。
イナ「ゾンネブルクの王家はみんな城を抜け出してんの?」
ルイス「いいえ。私はただお兄様を連れ戻しにきただけですわ」
イナ「お兄様って?」
ルイス「ロイお兄様のことです」
イナ「えぇ!?どう見てもアンタの方が年上に見えるよ!」
気品というかなんというか。その雰囲気がそうさせるのかもしれない。
どう見ても私より年上に見えてしまう。ロイはあたしの一つ上だったっけ。
ルイス「よく言われます」
ルイスは微笑んでそう答えた。
言われるんかい! って、本人は特に気にしてないみたいだけど……。
しかしあの王子。城を抜け出してまで何をするつもりなんだろう?
イナ「……で? ロイは何の目的で城を出てるの?」
ルイス「とても大事なことだそうです」
イナ「大事なこと、ねぇ。あたしにはナンパのために城を出たようにしか見えないけど」
ルイス「イナさん!」
イナ「いや、冗談よ冗談?」
ルイス「よく分かりましたね」
ニッコリ笑って言うルイス。あたしは思わずその場でズッコケた。
~~~
ロイ「ぶぇっくしっ! ん? 誰か俺の噂でもしたのかな?
や~れやれ。モテる男は辛いねぇ~♪」
~~~
イナ「あのなぁ。それって大事かぁ?」
ルイス「兄の気持ちは分かります。大事なことだと思いますわ」
思いますわって……この子もロイの妹だなぁ。
あたしはナンパが嫌い。男は硬派がいいとは言わないけど、ナンパな男は嫌いだ。
イナ「ルイス」
ルイス「なんでしょう?」
イナ「アンタも男をナンパしたりしないでしょうね?」
他国の王女相手に失礼な話だけど、ロイの妹ってだけで充分ありえる。
ルイス「そんなことは致しません。私、男の人が苦手で……」
イナ「なんだぁ。あたしと一緒かぁ。気にする事ないよ」
男が苦手。共通の仲間を得たようでちょっと嬉しい。
ルイス「良かったぁ。私、兄に似てると言われるのでイナさんに嫌われないかと心配でした」
イナ「似てる?そうかな?あたしには全然そうは思えないよ」
ルイス「そうですか?私も似てると思うんですけど……」
イナ「似てない似てない。大丈夫よ」
ポンポンとルイスの背中を叩いた。
イナ「なんだったら、ロイを探すの手伝うよ?」
ルイス「ホントですか!嬉しいです。イナさん……」
ルイスは私の手を握った。
イナ「なぬ?」
ルイスの視線が異様に熱いんだけど……?
あたしの背中に悪寒が走った。
イナ「……ロイと似てるってもしかして――」
ルイス「ハイ。私も女性の方が好きですから」
イナ「はぁ!?」
ルイスから手を引っ込めようとするが、ルイスはあたしの手を握って離さない。
ルイス「いい旅ができそうです。ゆっくり愛を深めて――じゃない。兄を探しましょうね」
イナ(あの国の行く末は大丈夫なんだろうか……)
冗談じゃない。あたしは男は嫌いだけど、女が好きってわけじゃない。
同性ってことで、なんだかロイよりたちが悪い気がしてきた。
イナ「ロイはあたしが国に帰るように言うから!ルイスはもう国に帰ってて!」
ルイス「いけません。せっかくイナさんとおとも(夜の)ができるというのに」
いや、したくないから!したくない!したくない!!
こうなったら力ずくでこの場を乗り切るしかない!
あたしは斬巌刀を振り上げ、さっきの男たちのようにルイスを吹き飛ばすことにした。
ルイスはとっさにあたしの手を離す。
イナ「ゴメンよ!斬巌刀・疾風怒濤!」
斬巌刀を振りぬき、大きな風を発生させた。
ルイス「そうはさせません!」
どこから取り出したのか、ルイスは紺色の棒を凄い勢いで回転させた。
あたしが起こした風は、半分の威力となってこちらに返ってきた。
踏ん張ればどうということはない。ビュンと風があたしの服と髪をたなびかせた。
それより、一人で旅をしているだけあって、それなりに強いようだ。
ロイは槍使いだったけど、ルイスは棒使いらしい。慣れた手つきで棒を回した。
王女だからといって只者じゃない!
あたしは身を引き締めた。
ルイス「イナさんが……スカートをはいていれば……」
悔しそうにそう言うルイス。
前言撤回しようか。別の意味で只者じゃない。
しかし手を離してくれれば逃げの一手だ。
イナ「これ以上、付き合ってられるかぁ!」
あたしはその場を後にした。
ルイス「待ってください!イナさーん!」
それを追いかけるルイス。
こうなったらさっさとロイを見つけるしか!
ロイを追うあたし。あたしを追うルイス。
この嫌な図式に終止符を打つため、あたしはこの街から逃げた出た。
旅はまさに、困難を極める……。