お絵板にて伊都さんからイナのイラストを描いて頂きました。
本編が全く皆無なイナですが、多くの方から応援してくださって本当に嬉しいです!
ありがとうございます!
イナ「ホレホレ~。早くわしの武勇伝を書くのじゃ!」
影利「勇剣姫伝ですけども……」
ブログ小説『-抜然人活劇-イナ~イナと家族~』
イナ「リラ殿! わしはリシュワットと剣の修行がしたいのじゃ!」
リラ「姫様にも困ったものですね……」
リラ殿は鋭い目でわしを睨んだ。
まさに目で殺すというやつじゃ。悪寒が止まらぬ。
リラ「あれほど言葉遣いには気をつけるようにお願いしているのに」
剣の修行より、リラ殿はわしの言葉遣いが気に入らないらしい。
イナ「だって母上と同じがいいんじゃ――ですもの」
お行儀良く座り直して答えた。
こうなるとリラ殿は「よろしい」とその場は納得してくれる。
あの時はこうだのああだのむしり返さないのがリラ殿のいい所じゃ。……怖いけど。
しかし今回は少し違った。
リラ「まったく。イト様と同じ事を言う……これは厳しく指導をしていく必要がありますね?」
どういう訳か引き下がってくれなかった。
わしは一つ咳払いをし、優雅に微笑んでみせた。
リラ「それで誤魔化されません」
イナ「ええ~!?」
リラ「イト様がそうでしたから」
くそぉ~。何かにつけてそれを出されては反論できぬぞ。
わしは本当に母親っ子じゃったから、色々似ている所があるからのう。
……髪が短いと父上に似ていると言われるのは腹が立つが。
わしはこの後、リラ殿がみっちり言葉遣いと礼儀作法の勉強をさせられてしまった。
▽
△
リシュワット「イナ姫様。我が剣、獅子王剣ハ簡単にハ振れマせヌゾ?」
イナ「わしはおぬしの剣を振りたいのじゃぁああああ~!!」
重い。リシュワットの剣は見た目の通りかなり重たい。
リシュワット曰く、見た目よりは重くないらしいが、わしにしてみれば見た目の通り重いのじゃ。
こんなものを平気で振り回すリシュワットは本当にバケモノじゃ。
……そういえば昔は鬼神と呼ばれていたらしい。
今では父上がこの国で一番の武人とうたわれておるが、その父上を倒すにはこの剣を扱えなければ話にならぬぞ。
イナ「わしは父上を倒すのじゃ!」
リシュワット「なぜですか?」
ザンッ!と獅子王剣を地面に突き刺した。
こんな大剣。持ち上げるだけで精一杯じゃ。
イナ「父上よりも、わしの方が母上を大大大大大好きなのじゃ!! 父上にはやらぬ!!」
そのうち母上を連れ出して、またどこかへ行ってしまうかもわからぬ。
わしの気も知らないで、父上めぇ~!!
リシュワット「姫様ハ竹蔵ヲ誤解してオられル」
イナ「何じゃと?」
リシュワット「姫様ノお父上ハ、この剣ト同等の剣ヲ持ってイマス。
この剣ヨリもハルカに細イ剣……刀トいうモノデス。
その剣ヲ持って、この獅子王剣ヲ……ワシを越えたノデス」
なるほど。達人は獲物を選ばないという理屈か。
イナ「おぬしが全盛期の頃だとしても、父上には及ばぬのか?」
リシュワット「戦とハ、兵とハ、時間を選べナイものナノデス」
わしは再びリシュワットの剣を持ち上げた。
しかし、やっぱり持ち上げるだけで地面に落としてしまう。
大の大人が持ち上げるだけで精一杯なことを考えると、進歩はしている。
だが、それではこの剣は振れない。
リシュワット「姫様。お父上ハ立派ナ人……イヤ、男でゴザイマス」
イナ「そんな事言って、わしに剣を取られるのが怖いのか?」
わしがそう言うと、予想外にもリシュワットは大笑いした。
姫が剣を持つ。それだけで大臣達からは反対があったものじゃ。
リシュワット「武人カラ剣は取レませヌ。姫様はモウ、武人ナノです」
イナ「ふむ」
リシュワットの言葉は本当に嬉しかった。
まだ木刀でリシュワットに勝った事は無いが、一太刀は浴びせられるようになった。
しかし、もう戦場を駆ける事のできない老兵のリシュワットに一太刀しか浴びせられないでいるのだ。
わしはまだまだ未熟じゃ。しかし、わしはもっと……もっと強くなりたい!
リシュワット「姫様ノ髪にハ何が結ばレテいますカ?」
イナ「これか? これは母上が昔つけていたリボンjじゃ!」
リシュワット「その肩ニハ何ガありマスか?」
イナ「これか? これはアイリーン様から頂いたのじゃ」
わしの左のショルダーアーマーには赤い宝玉がある。
これは母上の友人。アイリーン様から頂いたものじゃ。
リシュワット「きっとソレらニハ多くノ願いガ込めラレテいるデショう」
イナ「うむ! きっとそうじゃな。わしの大切な宝物ぞ!」
このリボンも、宝玉も、わしにとっては一番の宝物じゃ。
リシュワット「リラハお世話ヲ。ワシメは剣ヲ……」
イナ「ふむ。そうじゃな」
リシュワット「お父上カラは……」
父上の話題になると体がビクッとなった。
イナ「父上からは何も貰っておらぬ!」
リシュワット「イイエ。お父上ハ姫様ニ名前を贈りまシタ」
イナ「……う、嘘じゃ!そんなこと聞いたことないぞ!」
しかしリシュワットは首を振った。
そんなはずない。あの父上が……
リシュワット「竹蔵ハ最愛の人デある。お母上様より名を取って名づケたノデス」
母上の名はイト。イナというわしの名と似ている。
大好きな母上の名と似ているという事はとても嬉しい事じゃった。
それを父上が名づけてくれていたとは……微塵も思わなかった。
イナ「うぅ~。そうじゃったのか……」
なぜだか涙が止まらなかった。
もっと父上の事を聞けばよかったのじゃ。
リラ「あれ? 姫様?」
リラ殿が見えると、わしは思わずしがみついてしまった。
イナ「父上はどこじゃ? わしの名は父上が付けてくれたのであろう?」
リラ「竹蔵なら……イト様を連れて国外にいかれました」
…………なん、じゃと?
リラ「『イトの子だからイナ。覚えやすいだろ?』などと、相変わらずの人です」
…………………………。
リラ「お父上から伝言を受けてあります。『寂しいからって、もう顔をグシャグシャにして泣くんじゃねーぞ?』
そしてお母上様からですが――――」
…………ブチンッ!
イナ「許せぬ! 許せぬわ! あんのぉ~クソ親父めぇええ!!」
リシュワット「オオォ! 姫様ガ我が剣ヲ!?」
怒りに任せてリシュワットの獅子王剣を振り上げると、そのまま力任せに振り下ろした。
バッサリッ!!
振り下ろした剣は地面を真っ二つに裂いていた。
まるでこの大地に傷をつけたような跡が残ってしまった。
イナ「ハァ、ハァ、ハァ……」
リシュワット「姫様?」
イナ「開眼した! わしはおぬしの剣で父上を超えるぞ!!」
手の平の痛みも気にせず、体中の筋肉が悲鳴を上げながらも、わしは再び剣を振った。
今なら何でも断てる心持ちで、ある男を倒すがために剣を振り続けた。
リラ「……何かあったの?」
リシュワット「ワシらハ姫様ヲ、トンでもナイ剣(つるぎ)ニしたノかもしレヌ……」
イナ「我はイナ! 我に断てぬ物無しじゃ!!」
バッサリッ!
バッサリッ!!
バッサリッ!!!
イナの初バッサリ活劇がここから始まったといえます。
以前と似たようなオチですみませんw
まだ旅立つ前のイナですが、もう性格はできあがってますねww
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