彼はとある喫茶店の主人~マリオ編~
ここはとある町の喫茶店。
なんでもないこの店へ、極々たまに有名人がやってきます。
決まっていつも一人。カウンター席で飲み物を注文。
オーダーの品を出すとそれをじっと見つめて、深いため息をした後、私に話を始めます。
身の上話から誰にも言えない秘密など。
もちろんそれらの話は企業秘密。常識的に考えて……そうでしょう?
閉店20分前の片付けをしている時に彼はやってきました。
これで二度目の来店でしょうか。あの有名なマリオさんでした。
彼はカウンターに座ってコーヒーを注文すると、帽子を脱いで私に言いました。
マリオ「マスター。俺が誰だかわかるかい?」
私「マリオさんですよね?帽子を脱いでその質問をされるとは思いませんでしたが……」
そう言って彼を見た後、私は小さく咳払いをしました。
帽子が無けりゃ分からないのか?と、目が訴えていたので。
マリオ「見てくれよ。下手なプレイヤーのせいでボロボロさ」
私の失言のせいか。マリオさん。再び帽子を被ってました。
なるべく帽子の方を見ないように聞き返しました。
私「下手なプレイヤー、というと?」
マリオ「ブロックを叩く時は拳を使ってるんだが。たまに頭の方で叩くことを強いられてね。
中には頭で叩いてると思ってるプレイヤーもいるみたいだけど……」
私「それは私も思ったことがありました」
マリオ「マスターが小さい頃は8ビット機だからしょうがないよ。でも今時それはないよなぁ」
私「かなりグラフィックが進化しましたからね。子どもの頃では想像もつかないくらいに」
マリオ「俺はあの頃の方がよかったと最近はよく思うんだ。
マンマミーヤ!(なんてこった!)なんて言わなくてよかったしな」
私「そうですか?」
マリオさん。コーヒーのコップに手を掛けて深いため息をついてました。
結局コーヒーを飲まずに水の方を飲んでましたね。
飲んだ後「かぁ~」と声をもらしていました。
マリオ「俺、キノコ嫌いなんだよ……」
ポツリと。耳を疑いましたね。クリボーのことであって欲しいと思いながら聞きました。
私「クリボーのことですか?」
マリオ「スーパーキノコだよ。あんな体がでかくなるキノコなんて不気味じゃないか。
ただでさえキノコ嫌いなのに……まぁ、だからクリボーを踏むのは好きだけどね」
私はマリオさんがダメージを食らうと小さくなる理由を聞きたくてたまりませんでしたが止めました。
身体的特徴をどうこう言うのもアレですしね。
私「ファイヤーフラワーはどうなんですか?やっぱりそのまま食べるんです?」
マリオ「マスターはスマブラやったことない?あれ、食べれないんだよ?」
私「そうなんですか?NEWマリオでも使ってましたよね?」
マリオ「その言い方やめてくれ。俺はどこも変わっちゃいない。新しくなんて……」
私「あ……すいません」
ふとマリオさんが水の入ったグラスに視線をやったので水を足してあげました。
グラスを置いた頃にはコーヒーカップを手にしていましたけどね。
色々ヤケになってるように見えたのでそれも仕方ないかと。
マリオ「そろそろ引退かな……」
私「ええ!?」
思わず声が出てました。
それから店内に誰もいないのを確認しました。
私「引退するんですか?」
マリオ「もうピーチはさらわれないように城に監禁してある」
私「お姫様を……いいんですか?」
マリオ「城には色んな仕掛けをさせてもらった。今度はクッパが攻略する番だ。それで俺は自由になれる。
だいたい最近はキノピオだけで充分じゃないか」
私「……でも、マリオカートも人気ですよね」
マリオ「タイヤに穴を開けてきた。あんな危険なスポーツは無いね」
私「マリオパーティーはどうするんです?」
マリオ「あれこそ俺じゃなくていいだろ。今度から全部ルイージに任せるよ。
ルイージカートにルイージパーティー。ルイージテニス。ドクタールイージ……。
俺はたまに……マリオマンション、とか……」
マリオさん。コーヒーを一気に飲み干してお金を置いて帰って行きましたよ。
お金はコインでしたけど……百枚じゃなくて良かった。
そうとう参っていたんでしょう。ふら付いた足取りでしたし。
マリオさんが帰った後、床にモップをかけていたらカウンターの下で妙なものを見つけました。
丸い紙に「M」と書かれていました。
これはもうマリオさんのものだと疑いませんでした。帽子の真ん中についてるやつだろうって。
こんなものもあるんだと、正直笑ってしまいましたね。
でも、気付いてしまったんですよ。笑った顔が固まりました。
もう一度触ってみるとやっぱり紙なんですよね。
ワッペンとかアップリケとかステッカーとか、そんなんじゃなくてただの紙なんですよ。
帽子に紙っておかしいですよね。そこで気付いたんです。
もしかしてこれ、帽子のマークの上に張ってあったんじゃないかって……。
同じマークの上に張る理由なんてない。つまり、今の彼の帽子のマークは「M」じゃなくて……
マリオ「ごめんよマスター。俺、お釣り貰ってなかったよね?」
ドキッとして振り返るとさっきのマリオさんが立っていました。
赤い帽子に赤い服。だけど帽子の真ん中にあるマークを見て私は思わず声を漏らしてしまいました。
私「……マンマミーヤ……」
ここはとある町の喫茶店。
喫茶店は飽きない場所。喫茶店のマスターは飽きない仕事。
つまり、喫茶店のマスターである私は……たくさんの珍事に出あうわけです。
※フィクションです(←念のため)
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無題
Re:無題
あ、新作ありましたよw→http://www.nicovideo.jp/watch/sm18537373
やはりこれは朗読するべきか……(´・ω・`)