ブログ小説『竹蔵武勇伝†他~ホワイトデーだ~』
竹蔵「ホワイトデーだ…………った」
リシュワット「竹蔵。忘れテおッタノか?」
忘れてたっていうがつい昨日まで戦場を駆け回ってただろうが。
当然、用意するヒマもなかったわけだ。
そうだというのに、リシュワットはたくさんのチョコを用意していた。
竹蔵「それは?」
リシュワット「妻ト娘たちニ!」
竹蔵「そっちの包みは何だよ?」
リシュワット「コレは息子たちニダ。息子たちノ方が小サイ子が多イからナ。平等ニダ」
そこまで考えていたのか。
つい昨日までは剣一本に命を懸けて戦っていた男が、今日という日のためにちゃんと用意していたんだ。
それに比べて俺は……何もない。
一応、兵士として支給される金はあるが、街のどこへ言ってもチョコがないんだ。
売ってないものは買えない。さぁどうしたものか……。
イト「竹蔵ぉ~」
リシュワット「姫様ダ」
こう都合の悪い時に限ってイトがきてしまったぞ。
イト「今日は何の日か知っておるか?」
竹蔵「あ、ああ。知ってる」
イト「おお!リシュワットはたくさん用意しておるのう~」
リシュワット「ハイ。姫様ノ分モありマス」
俺の目の前でイトにチョコのお返しをするリシュワット。
イトは城の多くの人間にも配ってたからなぁ。ま、次の日えらい事になってたのは内緒だ。
イト「竹蔵は?」
竹蔵「俺は、だな……」
どうしたものかとリシュワットを見た。
するど、リシュワットは俺の肩に手を置いた。
リシュワット「姫様。竹蔵は後デ部屋にお持ちスルそうデス」
……お前、ホントにわかってるんだろうな?
イト「うむ!楽しみにしておるぞ~」
上機嫌に部屋を後にするイト。
俺はフゥとため息をついたあと、リシュワットを見た。
竹蔵「……で、大丈夫なんだろうな?」
リシュワット「無論、ダ。シッカリ用意してアル」
ごそごそとどこからか箱を取り出すリシュワット。
竹蔵「カラッポじゃないか」
リシュワット「竹蔵。……お前がプレゼントダ!!」
竹蔵「いや、意味がわから――」
俺の上から箱を被せるリシュワット。
竹蔵「お、おい待て!なんなんだよっ!?」
リシュワット「しゃべるな竹蔵!」
ゴキンッ!
俺はリシュワットの鉄拳を食らった。
だんだん意識が遠のいていく。
リシュワット「我に秘策アリ!」
――いや、意味が分からんって。
▽
△
イト「楽しみじゃのう♪」
わしは今か今かと竹蔵がくるのを待ちわびていた。
コンコンッ。
イト「竹蔵か!」
部屋の扉がノックされ、わしは勢いよく飛び出した。
扉を開け放つと、そこには大きな男が荷物を担いで立っていた。
イト「リシュワットか」
リシュワット「姫様。私はリシュワットではアリマセヌ?」
どこからどう見てもリシュワットではないか。
セリフの前にリシュワットって書いてあるし。
帽子などかぶりおってからに!
イト「ならおぬしは何者じゃ?」
一応、あわせておいてやるか。
リシュワット「私はリシュワット急便の者デございマス」
イト「うわっ。確信犯じゃろおぬし!?」
今さっきリシュワットじゃないと言っておったくせに。リシュワット急便とは……。
分からぬ。わしにはたまにリシュワットが分からぬよ……。
イト「で、何か届け物か?」
リシュワット「ハイ。ここに」
大きな荷物を部屋へ降ろすリシュワット。イト「はは~ん。これが竹蔵のプレゼントじゃな」
まさか三倍返しどころが何十倍にも返してくるとは思わなかったぞ。
いや、チョコとも限らぬな。何がはいっておるのやら。
リシュワット「姫様」
イト「なんじゃ、まだおったのか?」
リシュワット「ハンコをマダ貰ッテいまセン」
イト「出てゆけ!」
目の前にプレゼントがあるのにリシュワットの戯言に付き合っていられぬわ。
リシュワット「…………」
――なんでそうも残念そうなのじゃ……。
リシュワットはわしの言うとおり戻って言った。
イト「さて、中身はなにかのう~?」
いそいそと包みを開けていく。
何が入っておるのかのう?
竹蔵「ぷはっ!助かった~」
イト「竹蔵!?」
なんと中には竹蔵が入っていた。
しっかりリボンに包まって……いや、縛られて?
イト「どういうことじゃ?」
竹蔵「どういうことじゃって言われてもなぁ。……俺がプレゼントらしい」
イト「な、なんじゃとぉおおおおお!?」
まさか!バレンタインデーの時にわしがやろうと思って断念していたことを竹蔵にバレたのか!?
いや、それとも本気で……?
竹蔵「…………」
イト「…………」
なんとも恥ずかしそうな顔をする竹蔵。
竹蔵「……悪かったな。出直す」
体のリボンを外し、箱から出ようとする竹蔵。
イト「ま、待つのじゃ!」
竹蔵「?」
イト「それで良い」
竹蔵「はぁ~?」
わしは自分の顔が真赤になっていることに気が付いた。
今になってそれだけ恥ずかしいことだと分かった。
イト「おぬしを貰う!」
わしは竹蔵の入っている箱の中に入り、竹蔵に抱きついた。
竹蔵「おま、お前なぁ~」
イト「何じゃ?嫌か?」
竹蔵「うっ。べ、別に嫌じゃないけどよぉ」
イト「ならば問題あるまい」
竹蔵「そうかよ?まぁ、いいか」
わしはしばらくこの狭い箱のなかで竹蔵と入っていた。
――よし、来年はわしもやろうwww
(オマケ)
リシュワット「我ニ運べぬ物無し!!」
リラ「何を運んだのだ?」
リシュワット「ソレは“愛”ダ」
リラ「……私、にはあるのか?」
リシュワット「…………」
リラ「いや、その、冗談、だ……」
リシュワット「有るっ!!」
リラ「えっ?」
リシュワット「我ニ運べぬ物無し!!」
ホワイトデーだな~と思っていたら、ももこさんにイト姫を描いてもらったので結局やるハメにw
せっかくイラストを描いてもらった以上、それに応えるのがリシュワットだ!(イミフ)
なんだか今回はリシュワットが目立って仕方ないですねww
というかこのブログ小説。楽に楽にと書いてたはずが書くたびに長くなってる^^;
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